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北海道セキスイハイム株式会社(北海道札幌市)

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北海道セキスイハイム株式会社
(北海道札幌市)

【写真】籔さん 北海道セキスイハイムは1975年(昭和50年)設立。戸建住宅やアパートの受注・建築、などを行っている。
北海道セキスイハイムの従業員数は487名(2023年3月現在)。
今回は、経営管理統括部総務部健康推進室で保健師の籔明香さんからお話を伺った。

管理監督者研修において、役員会での目標決定と受講必須対象者を明確にしたことで、部署長のコミットメントを得ることができ、受講率100%につながった

まず、職場のメンタルヘルス対策の取組みを強化した背景についてお話を伺った。

【図1】北海道内の拠点 「当社グループは4つの関連会社で構成されており、そのうち3社、北海道内16か所の事業拠点に分散している約600名の従業員の労働衛生活動を当社が担当しています。北海道は拠点と拠点の距離が遠く、北見と函館の距離は約570km、東京と神戸の距離よりも少し遠い距離に位置しています(【図1】参照)。また、従業員の約半数が、時間的制約の大きい営業職です。このため、本来、本社が集約・管理するべき労働衛生活動が行き届いておらず、拠点任せとなっており、メンタルヘルス対策についても取組みへの認識や理解不足が見られていました。このため、労働衛生活動を強化するために、2021年度に初めて産業保健看護職として私(籔さん)が着任し、特に職場の健康課題と認識されていたメンタルヘルス対策の強化を図ることになりました。保健師(私)と産業医とで連携して進めています。」

「まずは、グループ全体の労働衛生活動強化の一環として、メンタルヘルス対策を強化するために、対象の管理職すべてに、本社主導で管理職研修を実施できる体制を構築することを目的としました。これを実現するために、様々な取組みを実施しました。」

次に、2021年度に行った取組みの内容と結果について、お話を伺った。

「まず、3つの関連会社の全社の労働衛生の取組みの主導、管理機能強化を目的に、“健康推進室”を新設しました。健康推進室は、北海道内すべての事業拠点を網羅する部門としました。健康推進室を新設した後は、組織の経営層から、これまで大事にしてきた価値観や働き方、これまでの取組みなどについてヒアリングを行いました。また、健診受診率や有所見率、病気などによる休業者数など、定量評価できていることとできていないことを伝えました。」

「組織の課題感を共有することで、経営層からコミットメントを得ることができ、当時の代表常務取締役であり現社長の青谷からのトップメッセージ配信につながりました。“北海道セキスイハイムグループ健康宣言”を作成し、“従業員のこころの健康づくり対策を強化します”という文言が入っています(【図2】参照)。全社で労働衛生に対する認識や取り組みへの理解を高めることにつながったと考えています。この健康宣言は、社内イントラネットに掲示し、グループ社員がいつでもどこでも閲覧できる環境にしています。」


【図2】北海道セキスイハイムグループ健康宣言

「また、“保健師”という職種になじみの少ない従業員が多く、はじめの頃は、『相談した内容は上司や人事部に伝わるんですか』と言われることも多かったです。そのため、まずは従業員との信頼関係を構築するために、すべての拠点を廻ってFace to Faceで話をする機会を意識的に作ることにしました。今3巡目なのですが、回数を重ねるごとに相談件数が増えていることを実感しています。社内イントラネットに“心と体の健康相談”というサイトを設け、メールや電話、オンラインで相談できる仕組みを作っているのですが、拠点に足を運ぶことで、ついでに相談したいという方もいますので、両方の相談ルートがあることが大切だと感じています。」

「そして、役員会で取組みの目標について審議を行い、具体的な行動計画として、研修受講対象者の受講率100%を2021年度の目標値に決定しました。」

「役員会で目標値の決定後、いくつかの拠点やグループを管理する部署長のコミットを得て、全ての拠点の管理職が研修対象者となるよう、研修対象者を部署長が決定しました。その結果、2021年度の受講対象者は、部下をもつプレ管理職を含め16拠点すべてから計161名が選定されました。」

「研修形式は、地理的課題、時間的制約、コロナ禍、組織風土の4つの視点を踏まえて、グループ全体で共通の教育動画を配信することを決めました。職種や会社が多様なので、定休日が異なっていたり、繁忙期が月初・月中・月末など様々でしたので、全員参加の開催は難しいと判断しました。動画配信形式による研修は、北海道全域どこでも共通の教育を受けることができ、それぞれが受講のタイミングを自分で選択できるなど利点があると考えました。」

「研修は、動画を社内イントラネットに掲載し、1ヶ月間の受講期間内で受講者の都合が良い時間に受講できるようにしました。研修は、外部講師に依頼するという方法もありましたが、研修を通じて健康推進室や保健師(籔さん)という存在を周知するという目的もありましたし、一般的なメンタルヘルス対策だけでなく当社としての位置づけなどの内容も含むものとしたいと考えたため、企画、撮影、編集、すべて私が行いました(【図3】参照)。」


【図3】社内イントラネットでの動画研修

「研修は、受講後のアンケート調査の回答をもって受講完了とし、すべての受講者から、研修形式などに関する意見収集を行いました。」

「受講期間内における受講率は90.7%でしたが、受講期間の延長と、部署長と保健師からの受講勧奨によって、最終的に100%を達成しました。当社の平均的な調査類の回答率は、呼びかけを行っても60~70%にとどまることが多かったので、事業場には大変喜んでいただける結果となりました。役員会で受講目標100%と決定されたことで、部署長のコミットメントを得ることができ、受講率100%に向けた働きかけにつながったと考えています。」

「研修後のアンケート調査の結果、受講者からは『メンタルヘルス研修を受けたことがなかったので勉強になった』、『今後も定期的に行ってほしい』など、今後の研修継続を望む声が大半でした。次回の研修形式の希望は、動画配信が6割、対面やオンラインが2割でした。」

メンタルヘルス研修時の事例検討では、自社でよくある相談内容を盛り込んで事例を創作することで、参加者にとっても身近に感じてもらいやすくなる

最後に、2022年度に取り組んでいる内容と今後の展望について、お話を伺った。

【写真1】 ハイブリッド形式での研修の様子 「2022年度は、2021年度のアンケート結果で対面やオンラインでの開催を希望する声があったことも踏まえて、ハイブリッド形式で行いました。初めに対面とオンラインで研修を行い、その様子を録画した内容を動画配信するという、2段階の実施としました。当日の研修では、私と同じ部屋にいる人も一人ひとりオンライン会議ツールに参加してもらい、全員が同じ画面を見ているようにして、集合の参加者もオンラインの参加者も混在して、事例検討を行いました。(【写真1】参照)」

「また、2021年度の研修にて基礎知識は伝えたので、2022年度は当社でよくあるメンタルヘルス関連の事例や相談といった内容をいろいろと盛り込んだ事例について、グループで事例検討を行ってもらう形にしました。」

「事例検討用の事例は2つ用意しました。1つは営業マンのうつ病の事例、もう1つは過重な業務と長時間労働が重なりメンタルヘルス不調になった事例、としました。うちの部署と似ているんじゃないかと思ってもらいやすい事例にすることを意識して作成したのですが、グループでの事例検討の発表の中でも、『うちでも起こらないとは言えないと思う』といった感想も聞かれました。一般的なものではなく、当社にあるような感じの事例であることによって、身近に感じてもらいやすかったのではないかと考えています。

「この研修の様子の動画を視聴した管理職からは、『自分以外の管理職の考え方も聞けてよかったです』などの声があり、専門職が話すだけでなく、同じ立場の他の部署の管理職がどのように考えているのか聞けることも有意義だと感じました。」

「また、2021年度は管理職対象のラインケア研修のみ実施しましたが、2022年度は、全従業員対象のセルフケア研修を、全社員が受講しやすい動画配信形式で実施しました。」

「管理職研修を通して、管理職の役割もお伝えしてきたおかげか、管理職から部下のことで相談を受ける機会も増えてきており、少しずつ職場のメンタルヘルス活動が、機能し始めているのかなと感じています。」

【ポイント】

  • ①メンタルヘルス教育を行う際は、地理的課題、時間的制約、コロナ禍、組織風土など、会社の状況を踏まえた上で、より効果的だと思われる方式を検討することが大切である。
  • ②管理監督者研修において、役員会での目標決定と受講必須対象者を明確にしたことで、部署長のコミットメントを得ることができ、受講率100%につながった。
  • ③メンタルヘルス研修時の事例検討では、自社でよくある相談内容を盛り込んで事例を創作することで、参加者にとっても身近に感じてもらいやすくなる。

【取材協力】北海道セキスイハイム株式会社
(2023年3月掲載)